きちんと整えて寝たのに
朝の髪が絡まっている理由
キューティクルと摩擦の研究から考える、シルクと眠りの関係
エビデンスコンサルタント 佐藤 洋平
博士(医学)。オフィスワンダリングマインド代表。医学・脳科学・生理学などの研究を読み解き、健康・美容・睡眠に関する科学的根拠をわかりやすく解説。企業の研究開発支援も行う。
Utukky代表・シルクマイスター 劉 学明
シルク素材の商品開発を専門とする経営者。シルクの低摩擦・保湿機能による髪・肌ケアに関心を持ち、医学博士との共同考察を通じ、素材の効能を科学的な視点から研究しています。
朝の髪のもつれには、髪そのものの性質も関係する
寝る前にブラシで整えたのに、
朝起きると後頭部や毛先がもつれている。
そんな経験をする方もいらっしゃると思います。
これは寝相のせいなのでしょうか?
寝相だけでなく、髪そのものの性質も関わっているのかもしれません。
髪には、こすられると引っかかりやすい「向き」があるんです。
髪をこする向きによって違いがあるんですね。
眠っている間、枕の上の髪には何が起きているのでしょうか?
一本の髪にも、なめらかな向きと引っかかる向きがある
髪の表面では、キューティクルという薄い板が、
根元から毛先に向かって重なっています。
屋根瓦を思い浮かべてみてください。
重なりに沿ってなでると手はするりと滑りますが、
逆向きになでると瓦の端に指が当たります。
髪も同じで、毛先から根元へこすると、
キューティクルの端が引っかかって摩擦が大きくなりやすいんです。
毛髪の摩擦に関する2025年の総説でも、
この向きによる違いが取り上げられています[1]。
普段、ブラシを根元から毛先へ通すことにも、理由があるんですね。
そうですね。
ブラシを根元から毛先へ通すのが基本なのも、このためです。
起きている間なら、こうして向きを選ぶことができます。
眠っている間は、向きを選べない
起きている間は向きを選べても、眠っている間はそうはいきませんよね。
寝返りは眠りの中で自然に起こる動きなので、
向きを選ぶことはできません。
寝返りを打つたびに、
枕の上で髪をいろいろな向きにこすっていることになります。
ときには逆向きにこすることもあるでしょうし、
長い髪なら首の下に挟んでしまうこともあります。
もちろん、寝返りのたびに髪が傷むわけではありません。
ただ、髪の表面の「滑りのよさ」が失われていると、
話は変わってきます。
傷んだ髪ほど、引っかかりやすい
髪の表面の「滑りのよさ」は、何によって保たれているのでしょうか?
髪のいちばん外側には、18-MEAという脂肪酸を含む薄い層があります。
天然のコーティングのようなもので、
髪のなめらかさは、この層によって保たれているんです。
ところが、この層はカラーリングや熱、
ブラッシングなどで少しずつ失われていきます。
先ほどの総説でも、傷んだ髪の摩擦が大きくなる主な原因として、
18-MEAの減少が挙げられています[1]。
髪の表面の状態によって、寝ている間の負担も変わるということですね。
そうなんです。
カラーやヘアアイロンをよく使う人ほど、
同じ寝返りでも髪への負担が大きくなりがちです。
髪の傷みは、自然には治らない
髪の表面が傷んでしまった場合、
トリートメントなどで元に戻すことはできるのでしょうか?
皮膚の傷は時間がたてば治りますが、髪の傷みは自然には治りません。
髪はすでに角化した組織だからです。
トリートメントで表面を整えることはできても、
元に戻るわけではないんです。
また、日本人女性の毛髪を調べた研究では、
年齢とともにキューティクルが刺激に弱くなり、
40〜50代で変化が目立ってくると報告されています[2]。
傷みが目立つようになる前から、日々の扱い方を考えておきたいですね。
そうですね。
傷みが目立つ前の20代、30代から、
日々の摩擦を減らしておきたいところです。
そして、その摩擦は眠っている間にも生じています。
寝返りは選べなくても、髪に触れるものは選べる
眠っている間の動きを選べないからこそ、
髪に触れる素材を考えたいですね。
シルクは、カイコの繭からとれる天然のタンパク質繊維で、
しなやかでなめらかな生地になります。
枕カバーをシルクに替えれば、
寝返りのたびに髪に当たる面も変わります。
髪が長い人には、ナイトキャップという方法もあります。
髪をまとめて包むので、寝具や髪同士がこすれ合いにくくなります。
こうした枕カバーやナイトキャップの使い方は、
専門的なケア情報でも紹介されているのでしょうか?
米国皮膚科学会も、くせ毛や縮れ毛の人への助言の中で、
就寝中の摩擦を抑える工夫として、シルクやサテンの枕カバー、
ナイトキャップを紹介しています[3]。
ただし、切れ毛や枝毛がどれだけ減るかを確かめた臨床研究は、
まだ十分ではありません。
その点は踏まえつつ、毎晩のことだからこそ、
取り入れやすい工夫といえるでしょう。
Utukkyのシルク枕カバーは、
いつもの枕に取り付けるだけで使えます。
シルクのナイトキャップもあります。
眠っている時間も、ヘアケアのうち
ふだんは、髪を乾かしてブラシを通したところで、
その日のヘアケアはおしまいだと考えがちですよね。
けれど実際には、そのあと眠っている何時間ものあいだも、
髪は枕の上でこすられています。
眠っている時間も含めて、髪のことを考えたいですね。
枕カバーを選ぶときには、眠っている間の髪のことにも、
目を向けていただければと思います。
この対話のまとめ
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髪には、すべりやすい向きと引っかかりやすい向きがあります
キューティクルの重なりによって摩擦は変わります。眠っている間は向きを選べず、寝返りのたびに髪がさまざまな方向にこすれます。
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傷んでから整えるだけでなく、日々の摩擦に目を向ける
髪のなめらかさを支える18-MEAが減ると、摩擦が大きくなりやすくなります。髪は自然には修復されないため、傷みが目立つ前からの配慮が大切です。
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寝返りは選べなくても、髪に触れるものは選べます
シルクの枕カバーやナイトキャップは、睡眠中の接触環境を見直す選択肢です。ただし、切れ毛や枝毛をどの程度減らせるかについては、十分な臨床研究がありません。
参考文献
- [1]Weiand E, Rodriguez-Ropero F, Roiter Y, et al. Understanding and controlling the friction of human hair. Advances in Colloid and Interface Science. 2025;345:103580. https://doi.org/10.1016/j.cis.2025.103580
- [2]Takahashi T, Mamada A, Breakspear S, et al. Age-dependent changes in damage processes of hair cuticle. Journal of Cosmetic Dermatology. 2015;14(1):2–8. https://doi.org/10.1111/jocd.12129
- [3]American Academy of Dermatology Association. 6 curly hair tips from dermatologists. June 30, 2022. https://www.aad.org/news/6-curly-hair-tips-from-dermatologists
※本稿は毛髪の摩擦に関する研究とシルクの素材特性を紹介するものです。特定製品による毛髪の修復や損傷予防の効果を示すものではありません。